南京東路で中国伝統医学に挑戦!

南京東路歩行街の老舗漢方デパートで中医の問診を受けてみました。

こんにちは、上海ナビです!五千年の歴史に培われた中国伝統医学、日本では鍼灸、漢方などが知られていますが、実際に体験したことのある方は少ないのではないのでしょうか?日本では「お医者さん」というとやはり西洋医学の医者を指しますが、中国では伝統医学の医師だって立派なお医者さん。行き付けは中医の専門病院という人も少なくありません。国際都市上海で最新流行のファッションを身にまとう今どきの若い子でも、病気になったら中医に診てもらい西洋薬はいっさい飲まないなんていう人がけっこう多いんです。せっかく中国にいるのだから、ぜひとも本場の中医学を試してみなければ!ということで、ナビが中医の問診を受けてきましたよ。
中医の診察では、「望」(舌や顔などを見る)、「聞」(匂いを嗅いだり音を聞いたりする)、「問」(問答)、「切」(脈診や触診など触って調べる)の「四診法」を用いて全身を観察します。今現在症状が出ている部分だけでなく体全体を診ることで、その症状を引き起こしている原因を見極め、体質改善など根本的な治療をしていくんですね。
中国では伝統医学は「中医学」、それに基づいて処方される薬は「中薬」と呼ばれています。日本語の「漢方医学」という言葉は、本来は日本の伝統医学のこと。もちろん漢方医学は中医学の影響を強く受けていますが診断方法などに違いがあり、また中国では「中医」は国家資格として認められているのに対し、日本では「漢方医」という国家資格はありません。本場中国の中医で使われる生薬の種類は日本の漢方よりもはるかに多く、また治療にも公的保険が適応されるなど、いわば政府認定の医療。中医専門の総合病院や大学もあるくらい体系が確立されているんですよ。それでは、いよいよ中医の問診部にお邪魔してみたいと思います!
~どこで受ければいいの?~
中医の診断は市内にいくつかある中医専門の病院や大きな漢方薬局の問診部などで受けることができます。ナビは以前ご紹介したこともある「南京東路」の老舗漢方薬局「蔡同徳堂」に行ってきました。

~フロアはこんな感じです~

「蔡同徳堂」の問診部は3階にあります。エスカレーターで3階に上がると、正面にたくさんの引き出しが並んだ大きな薬棚があります。いかにも「中国の薬局」っていう雰囲気ですよね。診察室は7部屋あり、毎日、上海市内のいろいろな病院から主任級の中医師が数名来られて診察をおこなっています。
★煎薬鍋 左から198元、228元、388元、318元。電源コードのついた煎薬用の鍋。これがあれば火を使わずに煎じ薬が作れます。
~診察スケジュール~  ※定期的に変更されます。

~ナビが中医の問診に挑戦!!~

それではいよいよ中医の問診に挑戦です。冬になるとカイロなしでは生きていけないくらいの冷え性に悩まされているナビ、中医の先生はこれをどう解決するのでしょうか?!

1. 3階についたらまず「掛号」と書かれた窓口で問診票を記入し番号札をもらいます。診察料は普通の漢方処方が20元、「膏方」という漢方薬を煮詰めたシロップの処方をしてもらう場合は42元です。「膏方」は冬季に体を養うために服用するもの、通常は11月下旬から年末の時期(冬至の前後)に処方してもらい冬の間ずっと飲み続けます。冷蔵で1月半~2ヶ月保存が可能だそうです。ナビは生薬そのものを見てみたかったので普通の処方をお願いしました。診察料は先にこちらで現金で支払います。(診察料のみカードは使用不可)
2. 番号が呼ばれたら診察室へ。問診をしてくださるのは第七人民医院の王莉珍主任医師、内科・腫瘍科がご専門で、女性特有の症状にも豊富な治療経験をお持ちです。
3. 椅子に座って脈を取りながら同時に顔・手・爪・舌の色や状態を診ます。舌は主に苔の状態や色、形などを診るそうです。脈は片手ずつ、左右両方かなり時間をかけて、強さ・間隔・規則性などをチェック。診察前に舌の色が変わるような食べ物を食べたり、激しい運動をしたりしないように注意しましょう。
4. 運動の習慣、煙草やお酒の量、睡眠や月経の状況、のどが渇くか、手が痺れることがあるかなども聞かれ、最後に処方箋を書いてもらいます。ナビの体質は「気虚」といって、体のエネルギーが不足しがちなために冷えが生じるのだそう。食べ物に気をつけてもっと運動をするようにとのアドバイスをいただきました。
5. 問診が終わったら、処方箋と番号札を持ってカウンターの「当班薬師」という札が立っているところに行ってください。薬剤師さんに処方内容が間違いないかチェックしてもらい、薬代のお会計をします。ナビは1週間分で70.1元でした。薬代はカード使用可です。
6. 処方箋にしたがって薬を調合してもらいます。オウギ・ヤマイモ・ツルドクダミ・甘草・紅花など20種類の生薬を手際よく分けていく薬剤師さん。重さを量るのに使うのは昔懐かしい分銅秤。時代を感じさせますよね。混み具合によっては薬ができるまでしばらく待つこともあります。
7. 薬を包んでもらっている間は下のフロアで暇つぶし。しばらくしてから再びカウンターへ行き、番号札を渡して薬を受け取ります。1日一包み、1週間分でこんなにたくさんあるんですよ。漢方薬は煎じるときの匂いなども大切ですので自宅で煎じて温かいうちに飲むのがベストなのですが、ちょっと面倒という方はお店で煎じて液体にしてもらうこともできます。急ぎの要望にもできる限り対応してくださるそう。シロップ状の「膏方」は通常1週間近くかかりますが、こちらも急ぎの場合は相談してみてくださいね。

中医の問診は特に難しいことは聞かれませんが、中国語が全く分からないという方は正確な診断を受けるためにも多少でも中国語が話せる方と一緒にいらっしゃることをお勧めします。初診の場合は1週間分の薬を処方されるのが一般的。その後も2週間毎に通院して様子を見ながら処方を変えていく必要があります。慢性疾患の治療でも、一度の診察で長期間分の薬を処方してもらうことはできないそうです。

~中薬を煎じる~

処方してもらった薬を煎じてみましょう。中薬だからといってしり込みしなくても大丈夫、水で煮るだけなのでとっても簡単です!ただ、作り置きをすると薬効成分がとんでしまいますので、毎日その日飲む分を煎じます。鍋は陶器のものを使いましょう。金属の鍋はイオンが生薬と反応する可能性があるのであまりよくないそうです。以下は一般的な煎じ方ですが、生薬の種類によっては半分くらいの時間で煎じるものもあります。
1 薬材一包みを開けて、「後下」と書かれた小袋に入っているもの以外を土鍋に入れます。「後下」というのは後から追加するという意味、有効成分が揮発しやすい生薬を後から入れるために分けられています。もし「先煎」と書かれた袋が入っていたら、有効成分が溶け出しにくい生薬ですので、それだけを先に30分煎じてから他の生薬を加えてくださいね。
2 薬材より3センチくらい上のところまでお水を入れ1時間浸してから強火にかけ、沸騰したら中火にして25分煮ます。「後下」の小袋の中身を加えさらに5分間煮て200mlくらいまで煮詰めたら一煎目の出来上がり。おたまなどで煮汁を取り出します。
3 二煎目も同じくらいお水を加えて20分煮ます。同様に200mlくらいの量まで煮詰めて煮汁を取り出します。
4 一煎目と二煎目の液を合わせて濃さを均等にしてから2つに分け、朝と夜に飲みます。ナビがもらった薬は、煎じている時はカレーに似たスパイシーな香りがして、苦味は全くなくやや酸味がありました。美味しいとは言えませんが、飲めないほどまずくはありませんでしたよ。これなら毎日飲んでも辛くはなさそうです。

取材中、中医学に無知なナビに優しく解説をしてくださった薬剤師の殷博武さんと、店内を案内してくださった張金さん。張さんは日本語を少し話せますよ。お二人にこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。非常感謝!
いかがでしたか?皆さんも中医に興味が湧いてきたでしょうか。今は特に気になる症状は無いという方でも、やはり日々の疲れは体に溜まっています。中国に来たついでに自分の体とじっくり向き合ってみませんか。以上、上海ナビがお送りしました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2007-01-26

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