豫園の南側に広がる昔ながらの住宅街。木造の長屋と市場、集合住宅が続く古い街並を散策しよう。
こんにちは、上海ナビです。
中国という国に、日本の古き良き時代の風景を探しにくる旅行者は今もたくさんいるようです。でも、実際に街を歩くとどこに行っても高層ビル。「上海にはもう古い街並はないんだね」「万博のときに全部壊されたらしいね」などという声を聞くこともあります。でも、ディープなエリアを丹念に散策すると、実はまだまだ上海にはノスタルジックな街並がいっぱい残っています。今日ご紹介するのはそんなエリアの一つ、「南市」です。
「南市」へ行こう!
「南市」の範囲というと実は広大なのですが、お勧めの散策エリアは地下鉄8、10号線「老西門」駅と9号線「小南門」駅の間に広がるエリアです。この二つの駅を下り、細い路地を目指して古い住宅街に分け入って行けばOK。タクシーが入れない路地ばかりなので、歩きやすいスタイルで気ままに探検しましょう。
戦前からの古い街並が残るエリアです
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「南市」とは?戦前、上海にはフランス租界、共同租界など外国の租界が置かれていましたが、外灘の南にある新開河より南は「上海老城区」として租界からははずれたエリアになっていました。戦後、正式に上海市が置かれると市中心に8つの区が設置されました。その一つが「南市区」。範囲は万博跡地エリアから豫園商城のあたりまででしたが、2000年に「黄浦区」に吸収合併され、現在は「南市」という地名は残っていません。
そのため、ひと口に「南市」と言っても範囲は曖昧。生粋の上海人たちは豫園商城の南側一帯を「南市」と呼ぶようです。『上海ナビ』では、以下の地図エリアを「南市」と決めたいと思います(異論はあるかもですが……)。復興東路より北は「豫園商城」「方浜中路」「四牌楼路」「東街旧貨市場」などの記事でご確認を。このあたりは豫園とあわせて散策できるビギナー向けです。今回ご紹介する復興東路より南の「南市」は、よりディープでチャレンジャー向けの散策エリアなのです。
上海の路地裏散策ビギナーは、「南市」はひとまず置いておいてまずはここから制覇を。
「南市」を歩こう!
それでは早速エリア内を歩いてみましょう。範囲が広く、路地が入り組んでいるため、歩くコースは決めずに気ままに歩いてみて下さい。ナビのお勧めストリートはこちらです。
夢花街孔子を祀る「文廟」がある文廟路と平行して延びる路地です。このエリアは「南市」のなかでもいちばん歩きやすい場所。特にこの夢花街は、奥に行くほど低い街並になるトリップ感を楽しめます。が、本格的に路地を歩いたことがない人を連れてくると、「ここ、すごいね……」と絶句されてしまうことが。でも、ビギナー向けなんですよ。文廟路、学宮路なども合わせて散策してみて下さい。エリアの真ん中には人気レストラン「孔乙己酒家」があるので、食事の前後の散策にもお勧めです。
蓬莱路ディープな世界への入り口的ストリートです。でも、ここも実は外国人バックパッカーの間では意外と知られているユースホステル「老西門国際青年旅舎(オールドウエストゲート・ホステル)」があるため、比較的歩きやすくてメジャーな通りかも。曲がりくねる道を突き当たりまで歩いてみて下さい。このエリア、何となくベトナム・ハノイの旧市街に似ている気がします。
凝和路南市エリアきっての一大市場ストリートです。通り沿いには八百屋、果物屋、魚屋、肉屋、雑貨屋、お惣菜屋などがずらり。庶民の台所といった風情です。ナビのお勧めは量り売りの甕出し紹興酒のお店。500mlから販売してくれるので(味見もできます)、洗ったペットボトルの持参を。お店側は容器を用意していません。下町のお店はなかなかにエコなのです。
俞家弄目立たない静かな通りですが、昔ながらの石庫門住宅や中庭のある家屋が現役で使われている様子を見ることができます。東側の突き当たりを左へ入ると喬家路にぶつかるのですが、このあたりは南市のなかでも有数の史跡スポット。文化財住宅や薬王廟の跡(見学不可)、銀杏の老木などがあり、戦前の面影をそのまま残しています。
こういう木造の家、絶滅寸前です
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曲がりくねった路地の奥に犬
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石庫門住宅や、
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屋根にこんな窓がある上海様式の住居が現役
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小石橋弄(街)「ここ、本当に上海の市中心地?」と思ってしまうほど、ディープで渋いお勧めストリート。昔気質の職人が集まる路地のようで、時計やカギの修理店、工具を売るバラックのような店舗が並んでいます。ナビが訪れた日は半分以上のお店が閉まっていたのですが、お休みだったのか廃業したのかは不明。どちらにしても開発の波が押し寄せ中のエリアなので、ぜひ早めに見に来て下さい。
趙家湾街布の問屋街として知られていた外倉橋路は、2015年12月現在道の片側がビル建設用地となり、すべて取り壊されて規模が縮小してしまいました。が、地元に根ざす布屋さんたちはしぶとく近所に移転して商売を続けています。そんな様子がわかるのがここ。布や手芸用品を売る店舗がひしめく通りです。ここも近々再開発されてしまいそう。お早めにお出かけを!
開発工事の真ん中でしぶとく営業中
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数年後には、どこもこうなってしまうかも
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<そのほかの必見ストリート>
古い住宅や庶民的な生活風景を眺めるなら、「浄土街」「金家旗杆弄」「梅家街」「薬局弄」へ。食べ物屋さんや雑貨店を見ながらそぞろ歩くなら「光啓南路」「喬家柵」へ。地図を見ながら、というよりも、「いい雰囲気の路地へ入ってみる」「広い通りに出てしまったら引き返す」を繰り返しながら歩くのがお勧めです。
南市を楽しむコツ
基本は自由に歩くことですが、知っておくと2倍楽しめるコツを考えてみました。
すっきり晴れた日に出かけよう
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お勧めの時期&時間帯いつ行っても絵になるシーンが見られる南市ですが、ナビのお勧めは季節を問わず洗濯日和の日。洗濯物がある路地はなんだかより上海らしい気がします。きれいに晴れた日は南市に足をのばしてみましょう。また、市場や食べ物屋さんの朝は早く、早朝5時ごろから街が動き出します。朝ご飯を食べ歩くのもお勧め。一方で、夕暮れから夜にかけて裸電球が灯る時間帯も風情たっぷり。路地からは各家庭の夕食のにおいが漂ってきます。
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犬猫を撮ろう上海人は、自分の犬や猫の写真を他人に撮られることが大好きです。特に犬はカメラを向けると例外なくみんな喜んでくれます。南市には、犬や猫といっしょにひなたぼっこしたり、八百屋を猫に店番させたりしている人がいっぱい。彼らの写真を撮っていると、もれなくお店の人にも話しかけてもらえ、地元の人と交流することができます。あと、ハトを飼っているおじさんも多いかも。ハト小屋があったらぜひ見せてもらってください。
後方に新しいランドマーク。どちらも「今」の上海です
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とにかく写真を撮っておこう意外に古いまま残っている「南市」エリアですが、開発の手はそこまでのびています。定期的に通っているナビも、壊されてしまったエリアの発見に毎回驚いている状態。将来的には確実になくなってしまう風景なので、ぜひ今の風景を撮っておいてください。コツは写真に地名を入れることと、新しいランドマークといっしょに撮ること。「あのときのあの場所の風景はこうだった」ということがわかると、今後の貴重な資料写真になるかも。
いかがでしたか? 今回ご紹介した街の風景写真は、すべて2015年12月に撮影したものです。場所は、頑張れば外灘や新天地などの主要観光地に歩いて行けるエリア。上海の市街地にはまだまだこういったレトロな街並が残っています。高層ビルやディズニーリゾートなど、新しいものが注目されがちな上海ですが、古き良き時代を求める方にも上海はお勧めできる街です。ぜひこの風景がなくならないうちに、上海の路地裏を歩きに来て下さい。
以上、上海ナビがお伝えしました。