旅のコミックエッセイが人気の上海人漫画家・灯泡同学さんに、上海のオススメを聞きました!
こんにちは、上海ナビです。
ナビが思う上海生活の魅力とは、日々誰かに会うたびに「こんな人が上海にいたんだ〜」と思えること! 上海は、誰かに教えたくなっちゃう人との出会いが多い街だと思ってます。ということで始まったこのコーナー。男女国籍は関係なく、ナビ独断の人選で突撃インタビューをしていこうと思ってます。第2回目は、漫画家として活躍中の上海人男子・灯泡同学さんに上海の楽しみ方を聞いてみました!
第2回ゲスト 灯泡同学さん/漫画家
本屋さんでは売り切れ状態だそう。興味のある方は『当当網』のネット通販を見てみて
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こんにちは〜。早速なのですが、灯泡同学さんのコミックエッセイ『下一秒去旅行』(中国青年出版社)読みました! 初めてのアモイと香港旅行をまとめた本でしたが、これがデビュー作なんですよね。個人で出したのはこの本が初めてです。今までは挿絵の仕事が多かったので。昨年までネットで発表していた漫画が出版社の目にとまったのがきっかけですね。
——もともと漫画はいつ頃から書き始めたんですか?
中学生の頃です。描くのも読むのも好きで、特に藤島康介の『ああっ女神さまっ』にハマってました。でも、その頃は漫画家になるとは思わなかったです。ただ読むのが好きだったので。目指そうと思ったのは卒業後なんです。
香港の記事では書店紹介(特に漫画コーナー)が多いなど、自分目線の街紹介がウケているよう
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『下一秒去旅行』は『当当網』(本の通販サイト。日本のアマゾンに相当)では5つ星をキープ、しかもレビュー数が300以上って……。人気の秘密は何だと思いますか?うーん、自分の角度で説明しているからでしょうか。説明が詳しいからとか? でも、読者は若い女性が多いみたいですね(笑)。10代から30歳くらいまでの人。ネットで描いていたときもたくさんの方が口コミで広めてくれました。
こんな漫画から街紹介が始まります
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素敵なゲストハウスやおいしそうな下町食堂がいっぱい載っていました。このお店選びのセンスがさすがだなぁ、と。日本にもこういうガイドブックがあればいいなと思いました。旅先でいいお店を探すコツは何でしょう。街を歩いているときに偶然見つけたものと、ネットの口コミを吟味して行ったものがあります。偶然通りがかったお店は、いい店かどうかの見分け方というのがあって(笑)。まずは看板が小さくてデザインが良いこと。看板が小さいので一見店なのかどうかもわからないこと。そして店内にイベントの手描き広告や、おもしろそうなポスターがたくさん貼ってあることです。それだけで、地元のセンスある人が普段からたくさん集まっている場所だということがわかりますよ。
イラストで細かく楽しみ方を紹介。香港が初めてでもこれさえ読めば安心♪
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なるほど〜。あと、たとえば香港のケーブルカーの紹介。「平地だと床がギザギザ、斜面にさしかかるとこれが階段になる」とか、「左側に座ると崖で風景が見えないから右側に座るといいよ」とか、本当に旅行者目線の細かい説明は、ナビも記事を作るときに見習わなくては! と思いました。こういうのって、旅先でその都度メモしてるんですか?これは記憶ですね。こういう小さい情報は誰も描かないから印象に残るんだと思います。僕の本は全体的にこういう小さい注意書きが多いんです(笑)。僕が思ったことをそのまま描いている感じですね。
——旅の常備薬といえば日本人は正露丸。でも上海人は黄蓮素なんだ〜とか、上海人のリアルな旅事情が分かるのもおもしろかったです。中国でも小栗左多里、たかぎなおこなどのコミックエッセイは翻訳出版されていますが、灯泡さんの作品の日本語版も出るといいですよね。
ぜひ! と言いたいんですけど、それはオファーがあればすごくやってみたいですけど、僕の本は文字が全部手書きなんです。この本を出したときもゲラの校正に一ヶ月かかりました。誤字はもう一回書き直すんです。それをもう一回日本語でやるとなると、すごい仕事量だろうな〜(笑)。あ、でもたかぎなおこの本も手書きでしたよね? あれは誰が中国語の台詞を書いてるのかな……。
——最近は旅行に行きましたか?
2012年はたくさん行きましたよ。中国国内は沈陽、ハルピン、無錫に。あとは台湾の東半分とタイにも行きました。実は来週も香港と広東に行く予定です。目的? 本を買いに(笑)。あとは、近いうちに台湾の右半分側に行きたいと思ってます。
——日本へ旅行に行くとしたら、どこでどんなことをしてみたいですか?
実は2011年に行く予定でいたんです。でも、東日本大震災があって中止になってしまって、その後はまだ予定がたっていません。行きたいのは東京、沖縄、北海道ですね。特に沖縄。海と太陽があるところが大好きなので。あとは東京。まずは秋葉原ですよね(笑)。あとは表参道でいろいろお店を見てみたいです。表参道のいいお店を紹介する雑誌を最近何冊か読んで、オシャレなお店がたくさんあるな〜、と。
上海の暮らし
——生まれも育ちも上海なんですよね? 今のお住まいは上海のどの辺ですか?
今は徐家匯の近くの普通のマンションです。でも、子どもの頃は陝西南路と南昌路に近い老房子(古い集合住宅)に住んでいました。
近所付き合いが濃厚な上海の老房子生活
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老房子での生活、ナビはあこがれなんです。楽しかったですよ。近所の人みんなでいっしょに住んでいるような生活でした。建物のなかにも近くの路地にも知っている人がたくさんいて。でも、今住んでいるマンションは隣りに誰が住んでいるかさえもわからない生活です。「みんなで暮らしてる感」が老房子の魅力だと思いますね。
確かに、上海は青空が見られる日が少ないかも
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旅から帰ってきたとき、「やっぱり上海はいいな〜」とかって思います?それはどうでしょうか(笑)。どの街にもその街の特色やいいところがありますから。でも、上海に帰ってきて思うのは空気が悪いこと。たとえば、香港はいつ行ってもさわやかに晴れているイメージですが、上海は特に今の時期(秋)空気が悪いんです。でも、日本人を含め外国人がこれだけ住んでいる都市ですから、それぞれの人が自分なりの魅力を見いだせる街だとは思います。
上海のオススメ
いちばんオススメなのは田子坊!
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『下一秒去旅行』では、上海にやってきた友達を案内する章がありました。もし、初めて上海に来た日本人を案内するとしたらどこへ連れて行きますか?まずは「田子坊」。上海の古いところも新しいところも全部見られる場所だからです。次に「外灘」。定番だからですね。浦東側と浦西側で上海の新旧を同時に見てもらいたい。あとは味のある路地を案内したいです。南昌路、富民路、茂名南路、そして新天地とその周辺でしょうか。
生煎はみんなが大好き!
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では、地元上海人としていちばんおいしいと思う上海料理店を教えて下さい。「小楊生煎」! カンタンでおいしいのがいちばんです。小籠包はみんな知っているけど、生煎は意外と食べたことのない人が多いんじゃないでしょうか。というか、「小籠包のおいしいお店は?」って聞かれるといつも困りますね(笑)。結局は有名な「南翔饅頭店」を紹介してますけど……。
——生煎、ナビも大好きです。あと、お聞きしたいと思っていたのは上海人オススメの上海蟹のお店。ガイドブックに載っているようなお店で上海人が食べてるとは思えなくて。
……上海蟹っていうのは家で蒸すものです。だから、どこのお店がいいか聞かれても答えられない(笑)。生まれてこの方、お店で上海蟹を食べたことがないです(笑)。祖母が寧波出身で、蟹や海鮮料理を家でどんどん作ってくれる人だったというのもありますが。でも、上海人にとって上海蟹は家族が集まったときに家でみんなで食べるものです。
レトロな老房子カフェ「老麦珈琲館」
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カフェやバーでオススメのお店はありますか?いちばん好きなカフェは南昌路の「彫刻時光」。あと、桃江路の「老麦珈琲館」もいいですよ。店舗自体が老房子で、調度品はオーナーが旅先で買って来たもので揃えているそうです。といっても実は僕、コーヒーが飲めないので、コーヒーがおいしいかどうかはわからないんですけど。頼むもの? ココアです(笑)。バーは全然行かないのでわかりません。
ミルキーみたいな味のミルクキャラメル「大白兔」。コンビニでもスーパーでもどこでも買える上海の定番お菓子です
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飲めなくて甘いもの好き! では、灯泡さん目線で「男子に喜ばれる上海土産」を教えて下さい。ナビはいつも男性へのお土産選びに困ってるんです。……。男性へですか……。それは僕もちょっとわからないかも(笑)。甘いものが好きなら「大白兔」はどうですか? 最近はチョコ、ヨーグルト、ミント、コーン、小豆などいろいろな味が出ていて、コンビニでもどこでも売っています。小袋入りもあるのでいろいろ買って味見してもらうのはどうでしょう。しかもこのいろいろな味シリーズは、上海でしか売られてないって知ってました?
——そうなんですか!? 中国全土で売っているものかと思ってました。意外とウケるかもです。では、最後の質問になってしまいました。『上海ナビ』の読者には、初めての上海旅行を計画中の人も多いと思うんです。「こうしたらもっと上海の旅が楽しくなる!」みたいなコツを教えて下さい。
自分の趣味に沿って情報収集してから出発することですね。一般的なガイドブックじゃなくて、ギャラリーや美術館好きなら上海アートを特集しているようなアート系雑誌を読む、鉄道好きなら中国の鉄道だけを紹介した本やエッセイを読んでみてください。狭い角度からその街の情報収集をすると、すごくおもしろいですよ。
アートファンなら美術館やギャラリー情報を徹底的に調べてみて
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奥深い中国の鉄道事情。日本でもエッセイや本が多数見つかるはず
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——なるほど。漠然と有名な観光地だけに行くより、一つ目的を決めて、そこだけに詳しくなってから街を歩くとより深みのある旅になりそうです。旅漫画家さんならではのお話がたくさん聞けて、すごく勉強になりました。今日はありがとうございました!
売れっ子の漫画家さんに会うのは初めてだったナビ。漫画の中にはご自身が締め切りに追われる姿も出てきます。そんな忙しいなか、図々しくもナビが指定した場所に出向いてくれ、ナビのつたない中国語のインタビューに応じてくれた灯泡同学さん。この人柄がファンを増やしているのだと確信したナビでした。絵や写真が多くて読みやすい灯泡さんの本は、中国語を勉強中という方にもオススメですよ。
以上、上海ナビがお伝えしました。
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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2012-11-27