ペットを飼う人必読! ボランティア活動に奔走するOL・江園さんに、上海の猫事情を聞きました!
こんにちは、上海ナビです。
ナビが思う上海生活の魅力とは、日々誰かに会うたびに「こんな人が上海にいたんだ〜」と思えること! 上海は、誰かに教えたくなっちゃう人との出会いが多い街だと思ってます。ということで始まったこのコーナー。男女国籍は関係なく、ナビ独断の人選で突撃インタビューをしていこうと思ってます。第6回目は、「ぜひこの人を取材して!」というナビユーザーのリクエストに応え、野良猫の保護活動をしているOL・江園さんのご自宅におじゃましてきました!
第6回ゲスト 江園(ジャン・ユエン)さん/OL
江さんと猫
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初めまして! まず、前置きが長くなるんですが、今回微博(中国版ツイッター)を通してナビに「江さんを取材してほしい」というリクエストがあったんです。上海で捨て猫、しかも障害のある猫たちを保護している若い女性がいること、彼女のような人がいることをもっと日本人に知ってもらいたいという話でした。いつ頃からボランティア活動を始めたんですか?2010年12月に一匹の猫の里親になったのがきっかけでした。知り合いのおばさんで猫の保護活動をしている人がいるんですが、その人に触発されたのもありますね。
——今の状態を教えて下さい。
今、家にいるのは18匹で、そのうち4匹に障害があります。主にネットで里親を募集していて、月平均で2人くらい里親になってくれる人が見つかる感じですね。猫関連での費用は月に2000元、病院に行った月はプラス3000元くらいかかっています。
元気な猫は室内に放し飼い
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要介護の猫はケージで飼われています
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下半身が不自由な子。でも、毛並みもきれいで目やにも出ていません。美人。江さんのていねいな世話ぶりがうかがえます
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食事中にカメラ目線。思わず笑ってしまうおもしろい性格の子多数
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——そうなんですね。失礼かもですが、江さんは今おいくつですか?
88年生まれです。あ、今年の5月に結婚したんですよ。旦那も猫好きです。猫のためにマンションの1階に部屋を買おうと思っていて、仕事も頑張っています。庭に「猫舎」を作りたいな、と。障害のある子たちはもう里親は見つからないと思うので。
麻痺している部分以外は普通に元気なのですが……
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25歳!? しっかりしすぎです……。介護が必要な猫もいるんですよね。下半身が麻痺している子が4匹いるんですが、自分で排泄できないので朝晩2回お腹を押して排泄させます。最近はワクチンも自分で打てるようになりました。知り合いの獣医さんに直接教えてもらって。このケージのいちばん下にいる子はうつ病で、一日中動かないんですよ。保護した当時はものすごく痩せていてうずくまっていて、死んでるんじゃないかと思いつつ家に連れ帰ったんですが、今は元気に太ってくれて良かったです。相変わらず人間嫌いですけど。
猫用の飲み薬、傷薬、サプリメント、ノミダニ駆除薬なども揃えています。保健室並み
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自分でワクチン……。保護活動って、そこまでできないと勤まらないんですね。死にそうな状態だったのを保護するパターンが多いんです。血だらけだったり、「もうダメかも」と思っても、きちんと世話をするとみるみるきれいに元気になるんですよ。リビングの救急箱も中身は全部猫の薬です。最近は高速道路にペットを捨てる人が増えていますね。あと、この間も保護したばかりなんですが、台風で大雨が降っている日を狙って子猫を外に放置する人も。確実に死んでしまう捨て方が増えています。
各公園や住宅街で活躍する猫おばさん
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ひどい……。日本でも年間数10万頭の犬猫が殺処分されていると言います。国籍は関係なく、知っておかなければならないことですよね。ところで、上海には猫おばさん(公園などに猫の世話をしに行く主婦)や、他界されてしまいましたが南匯の猫王(1000匹以上の野良猫を助けた老人)など、猫に関する市井の英雄が多いと思います。みんな、専門家でも組織でもない普通の個人です。何故なんでしょう。猫おばさんは公園だけじゃなくて各住宅街に一人はいます。うちの近所にもいて、夜11時に猫の行動時間に合わせて世話をしています。警戒心が強い猫も安心して食べられるように、隠れられる場所にエサを置いたりして。あの人たちは、猫がかわいいからエサをあげてるんじゃないんです。放っておいたら死んでしまうから世話をしているんです。心が広い人たちだと思います。
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確かに、猫おばさんが猫を触ったり抱いたりしているところは見たことがないかも……。もちろん、野良猫にエサをあげることに苦情を言う人もいます。いちばんの問題は、上海の獣医の診察代や避妊手術代が高額なことですね。海外では国によって無料だったり半額免除だったりしますよね。猫おばさんたちも、できる限り避妊手術を受けさせているようです。私も保護した猫は必ず手術をしますし、ワクチンを打つこと、健康診断を受けることは絶対必要だと思っています。
——なんか、すごく頼もしい意見を聞いた気がします……。ところで、江さんは、普段はOLとして普通に働いているんですよね。
ウェブ広告関連の仕事をしています。忙しいときはなるべく朝早く起きて猫たちの世話をするようにしていますが、オフィス自体が自宅から近いので。残業や出張があるときは、毎回どんなに遅くなっても泊まらずにその日に帰るようにして、24時間以上家から離れることがないようにしています。
上海の暮らし&お勧め
山と世界遺産の村がある黄山
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江さんはどちらの出身ですか? 安徽省の黄山です。上海に出てきたのは2007年かな。
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黄山ですか! ナビは宏村に行ったことがあるんですが、何年も前なのにすごく印象に残っています。黄山出身者的には、上海はどんな街だと思いますか?生活に関しては上海も黄山も変わらないです。上海の魅力は仕事の賃金が高いことでしょうか(笑)。黄山は両親がいる実家なので、実家的な便利さというか、母が食事を作ってくれたりするのでやっぱり居心地はいいですね。
ただ、ボランティアへの理解度は断然上海のほうが高いです。私も上海に来るまでは、野良猫を保護するなんて思ってもみませんでした。そういう概念さえ知りませんでした。お金持ちが愛犬のためにいいお肉を買い与えることなんかも理解できませんでした。黄山では、猫はネズミ取り要員、犬は番犬としてだけ飼われていますから。
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……ペットという概念がないまま育った江さんが、たった数年後に猫の介護を完璧にできるようになっている(!)というがびっくりです。日本人だったら、「その前にペット関連の専門学校に行こうかな」「ボランティア団体に入ろうかな」とか絶対思いますよ。そういう段階を踏まずに、今すぐ必要なことを即身につけて実践しちゃうのが中国人女子らしいなと思います。自分の能力の範囲でやるだけですよ? 新婚だし、普通に自分の子どももほしいと思ってます(笑)。「動物たちの命を守る!」だとか、大きいことは言いたくないです。
——話題は変わりますが、今まで『好好インタビュー』に登場してくれた中国の方は、日本と何らかの接点がある方ばかりでした。江さんは、そういうわけでもないと思います(笑)。いきなり日本人が自宅におしかけてきてびっくりしたと思います。日本の印象というか、日本といえば思いつくものなど、教えてもらえませんか?
何だろう……。私、どちらかというと四川料理みたいな辛いものが好きなので、薄味の日本料理は苦手なんです。あとは……、思いつかないなぁ(笑)。あ! 日本のペット用品は品質がすごくいいと思いますね。水をあげる容器、缶詰、猫用おむつなど、全部日本製を使ってますよ。ネットで取り寄せています。
——そうですか! じゃ、今度帰国したときに何か買ってきますね。ところで、『上海ナビ』は上海旅行を考えている日本人の読者が多いサイトなのですが、江さんは上海でどこかお勧めの場所はありますか?
家と会社以外どこにも行かないんです。ショッピングとか街歩きもしばらく行ってないし……。家から出ないですからね(笑)。
水族館も人気の広大な公園です
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では、江さんのご自宅近くでお勧めの場所はありますか?「長風公園」かな。
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猫おばさんもいる公園ですよね(笑)。今日、久々に普陀区(江さん宅のある長風公園エリア)に来たんですが、ピカピカのオフィスビルや外資系ホテルが増えていて、蘇州河沿いもすごくきれいに整備されていてびっくりしました。今後このあたりも見逃せない場所になりそうです。ほんと、どこにも出かけないのでこの辺しか知らないんです。ごめんなさい。
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いえいえ。では、上海在住の日本人でこの記事を見て「里親になりたい!」と思われた方もいるかもしれません。何か条件はありますか?家族と同じように迎えてくれる方、帰国するときはきちんと手続きをして日本に連れて帰ってくれる方、病院で定期的にワクチンを打つなど、最後まで責任を持って世話をしてくれる方なら大歓迎です。ただ、経済的に心配なので学生さんはお断りしています。
※江さん宅の猫はすべて避妊手術(成猫)、ワクチン接種済みです。興味のある方は、日本人スタッフ常駐のショップ「牛心」へ。仲介を請け負ってくれることになりました。費用はかかりませんが「引き取り時に江さんへキャットフード、ペット用トイレシートなどの物品カンパがあるとうれしいです」とのこと。
【重要】 帰国等の理由による猫の引き取り希望のメールが増加しています。一時預かり、引き取り等のお問い合わせには、こちらでは一切応じることはできません。また、最後まで飼っていただけない方、住居や家族、同居人などの急な事情の変化で飼えなくなる恐れがある方、猫との帰国に必要な手続きの予備知識がない方には、江さんの猫のお引き渡しはできません。どうかご了承ください(2014年7月追記)
——インタビュー中、ナビのひざの上で寝てしまう猫もいました。人なつこくてきれいな子ばかりなので(定期的にシャンプーもしているそうです)、猫好きの方はぜひ見学に来てほしいです。今日はありがとうございました。またぜひ遊びに来ます!
話しかけつつ鼻歌を歌いつつ、終始楽しそうに猫たちの世話をしていた江さん。「シャーッ」と威嚇してくる猫に対しては、「分かり合えないことはもう分かってる。あきらめてる」と言いつつ手を差しのべていました。彼女を動かしているのは、「死んじゃうから助ける」というシンプルな動機。ナビは今後も江さんの活動に注目していきたいと思っています。
以上、上海ナビがお伝えしました。
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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2013-11-07