上海アート入門!

上海で「芸術の秋」に浸ってみる? 中国画から現代アートまで、上海のアート事情がまるごと分かるナビ流上海アート指南! 

こんにちは、上海ナビです。
皆さんは普段、美術館へ行きますか? 日本では、アートに興味があるという方でなければ、話題の作品が日本にきたからなど特別なイベントがないとなかなか足が向かない場所なのではないでしょうか。一方上海では、意外や美術館やギャラリーは生活に身近な存在。先日、上海で個展を開いたある日本人画家に、「東京での個展と上海での個展、何か違いはありますか?」と聞いてみたのですが、「客層が違いますね。東京では『観よう』と思ってくる人が多いけど、上海は通りがかりの人が多い」と話してくれました。これって、アートスポットが街に溶け込んでるってことですよね。
日本で話題になることも多い上海アート。でも、一口にアートといってもさまざまなジャンルがあります。今回ナビは、伝統的な中国画から最新の現代アートまで、ジャンル別に見どころも踏まえてご紹介したいと思います!

上海アートはこの2種類!

伝統的な山水画。

伝統的な山水画。

<中国画>
中国の伝統的な絵画です。墨、顔料、宣紙で描かれるもので、特に宋の時代に名作が多く描かれました。近代では、任伯年、八大仙人、斉白石、陸儼少、林風眠などの画家が有名。現在、上海にアトリエを置いて活躍している画家では、陳家泠、施大喂、汪観清、張培拙、張桂銘などの名前を知っておくと良いかも。伝統的なものとはひと味違うコンテンポラリーな作品を制作している若手もたくさんいます。
「日本の墨絵とはどう違うの?」と思う方もいるかもしれません。中国では、そもそも「墨絵」「水墨画」という言葉自体あまり使わないそう。あくまで「中国画」なのです。また、日本の水墨画が「にじみ」を重視するのに対し、中国画は「線」を重視します。中国画は、木の幹や人物の洋服のしわを描くときにも、「書道」を意識して線の勢いや形、リズムで表現します。
現代的なタッチの山水画。

現代的なタッチの山水画。

モダンな花鳥画。

モダンな花鳥画。

伝統的な写意(自由に筆を動かして描く)花鳥画。

伝統的な写意(自由に筆を動かして描く)花鳥画。

何家英の作品。工筆(細い筆で緻密に描く)人物画家を代表するアーティストです。

何家英の作品。工筆(細い筆で緻密に描く)人物画家を代表するアーティストです。

こんなポップな中国画も。

こんなポップな中国画も。

上海の街並を描いたモダンな作品。これも中国画です。

上海の街並を描いたモダンな作品。これも中国画です。


上海を代表するアーティスト・丁乙の作品。

上海を代表するアーティスト・丁乙の作品。

<現代アート>
90年代後半から海外でも注目され始めた上海の現代アート。今の上海アートの流れができたきっかけを作ったのは、60年代生まれの画家たちです。それまで社会主義リアリズム(写実画)が主流だった上海の油絵でしたが、彼らの時代からピカソ、マティスなどの作品を大学で鑑賞できるようになったのがきっかけ。でも、写実の技法を叩き込まれていた彼ら。当初は、ダリのような作風のアーティストが多かったそうです。
「M50」内にある香格納画廊・H-Space。

「M50」内にある香格納画廊・H-Space。

今、上海にアトリエを置いて活動している主なアーティストは、丁乙、周鉄海、施勇、曾梵志、楊振中など。詳しい方なら、彼らの名前を見て「香格納画廊」を思い出すかもしれません。上海アートをここまで盛り上げたのは、彼らと「香格納画廊」、そしてこの画廊のスイス人オーナー、ローレンス氏であるという人もいます。
香格納画廊の作品たち。 香格納画廊の作品たち。

香格納画廊の作品たち。

オリンピックで使用された「鳥の巣」に同化する人。「なんでこんな絵を?」と疑問に思うだけで、今の中国が見えてきます。

オリンピックで使用された「鳥の巣」に同化する人。「なんでこんな絵を?」と疑問に思うだけで、今の中国が見えてきます。

現代アートと聞くと、「シュールすぎてわからない」「何がいいのか、どこを観ればいいのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。でも、中国の現代アートには社会批判、ユーモア、パロディの要素がたっぷり。流行りもの、社会問題、風潮など、上海についてある程度知っていれば、クスッと笑えてしまうものもあるはずです。とにかく不条理なものを一生懸命作って爆笑させてくれる人も。この辺は、日本よりも一般市民がアートに親しんでいる理由の一つでもあるかもしれません。

作品を見に行こう!

<中国画篇>
目利きにまではならなくていいけれど、どんな中国画が「いい絵」なのかくらいは分かるようになりたいという方にオススメのスポットをご紹介します。ひととおりまわれば、土産物店や骨董屋さんで粗悪品をつかまされることはなくなるハズ!
上海博物館
3階の中国歴代絵画館には、唐代から清代までの名画の数々が展示されています。山水、花鳥、人物という中国画のジャンルが、それぞれどの時代にピークを迎えたのか、「にじみを重視せず線を重視ってどういうこと?」などの疑問が解けるはず。展示室は、作品の前に見学者が立つと、ふっと明かりがつくシステムになっています。
上海中国画院
中国画の学術研究機構。一階には展示室があり、定期的に企画展が開催されています。市内の美大教授、国家一級クラスの画師などの作品のみ扱っているので、正統派の現代中国画を見ることができます。この建物内にアトリエを構えている大御所も多く、個展のオープニングパーティーなどに行くとその顔ぶれに圧倒されることも。
恒源祥香山美術館
2010年4月にオープンした中国画をメインとする美術館。オーナー、顧問、監修者などに一流画家を揃えており、見応えのある良質な作品に触れることができます。入場料が無料なのもうれしいところ。
朵雲軒
上海最古のギャラリー兼国営画材店。近代から現代の巨匠たちの作品を鑑賞できるほか、販売もしています(本物はびっくりするほど高価です!)。また、画材や書道用品も質の良いものが揃っています。ほしいという方は、土産物店ではなくここで購入を。美大生やプロの画家も、ここで画材を調達しているそうですよ。

<現代アート篇>
上海には「アートスポット」と呼ばれる場所が無数にあります。でも、行ってみたらただの商業街だったなんてこともよくあるんですよね。そんななか、アート関係者が集うオススメスポットだけを厳選してご紹介したいと思います。
M50
上海でもっとも有名なアートスポットといえばココ。上海を代表する現代アーティスト・丁乙が2000年にこの地にアトリエを構えたことから、川沿いのさびれた工場街がギャラリー街に生まれ変わりました。今も多くのアーティストがここにアトリエを構えており、前出の「香格納画廊」の一部もこちらの敷地内にあります。地下鉄の駅からもやや遠く、周囲にショッピングスポットなどもなく、帰りのタクシーも捕まえにくいとあって、本当にアートが好きな人しか来ないというのも魅力の一つですね。ナビはいつも自転車で出かけてます♪
威海路696号
2006年ごろから国内外のアーティストたちが住みつき始めた、南京西路エリアの廃ビルを利用したアートスポットです。コンクリート打ちっぱなしの館内には、アトリエやギャラリーがぎっしり入居。立地が良いため、日本人や欧米人のアート関係者もここにギャラリーや事務所を構えているよう。でも、行ってみるとほんとに「廃ビル」そのもの。よほど勇気がないと一般客は立ち入れないという点で、真のアートファンからは評価されています。
上海外灘美術館

上海外灘美術館

外灘エリアのギャラリー
外灘3号の「沪申画廊」、外灘18号の「18画廊」、ザ・ペニンシュラ裏手の「上海外灘美術館」など、外灘にはレベルの高い現代アートが鑑賞できる施設が揃っています。外灘は、実はアートスポットでもあるんですよ。食事や観光の合間に立ち寄れるのも便利。ギャラリーの窓からは、絶景も楽しめます。カフェやラウンジを併設しているところもあるので休憩にもご利用を。
沪申画廊

沪申画廊

18画廊

18画廊

 上海市城市彫塑芸術中心
「紅坊」とも呼ばれる上海彫刻を中心としたギャラリーが集うエリア。最近は、敷地内にライブハウスやクラブ、カフェなどが目立つようになってきましたが、現代アート美術館として2010年にオープンした「民生現代美術館」は、さまざまな企画展を開催してガンバっています。先ほど名前が出た現代アーティスト、周鉄海が執行館長を務めているんですよ。

知っておきたい上海アートの常識

 ※上海アートは撮影OK!
上海では、美術館、ギャラリー、博物館での写真撮影は基本的にOKなのです! 彫刻といっしょにピースなども可能。私営ギャラリーなど、一部では注意されることがありますが、公共の大型アート施設なら問題なく撮影できます。例えば右の写真の女性。風船を使ったアート作品にまぎれこんでポーズを決めています。展示会場で堂々と写真が撮れるのは上海ならでは。
※知っていれば防げるアート詐欺
南京東路など、日本人観光客の多い場所でよく報告されている詐欺まがいの行為があります。身なりのきちんとした中年男性が「◯◯美術家協会」「◯◯一級画師」「◯◯美術大学教授」などの肩書きが入った名刺を出しながら、「私は有名な画家です」ということをカタコトの日本語で話しかけてきます。そして高額な絵や画集を売りつけるというもの。日本人はなぜか「中国の有名な画家」っていう肩書きに弱いんですよね。彼らは苦労話も得意で、「日本で個展をしたことがある」「日本の◯◯美大の先生は友達です」などのウソもつきます。冷静に考えれば、観光地で外国人に話しかける有名画家なんていません。名刺も偽造です。

上海の主要アートイベント

上海美術館

上海美術館

上海ビエンナーレ(日時:偶数年の10月 場所:上海美術館)
毎回大行列で入館できないほどの盛況を誇る上海最大のアートイベント。奈良美智をはじめ、日本の主要現代アーティストも過去多数参加している展覧会です。会場は毎年上海美術館。2010年は10月23日に開幕する予定です。
前回(2008年)の様子です。 前回(2008年)の様子です。

前回(2008年)の様子です。


Sh Contemporary(日時:毎年9月中旬 場所:上海展覧中心)
アジア最大の現代アート見本市。中国、韓国、日本を中心に、トップアーティストたちの作品が上海に集合します。2010年は9月8日から12日まで開催。ナビももちろん行ってきました。今年はとにかく外国からの参加者が多くてびっくり。欧米のアートファンも、「アジアのアートの拠点は上海」という見方になってきているようです。各国のプレスから、地元のお年寄り、子どもまでお客さんも多種多様。日本で現代アート展を開催しても、おそらくこんなに幅広い客層は集まらないだろうと思うのです。
2010年はこんな作品が集まっていました。
会場内は国際的な雰囲気。中国の現代アートへの外国人たちの視線は、なんだかものすごくアツいものがあるのです。
アジア以外にも、パリ、ニューヨークなど、各国の有名ギャラリーやアート関係者が上海に集まりました。

アジア以外にも、パリ、ニューヨークなど、各国の有名ギャラリーやアート関係者が上海に集まりました。

上海アート入門! 上海アート 現代アート 中国画 美術館 ギャラリー 展覧会アートスポット
ナビがスゴいと思ったのはこの作品。一見山水画なんですが実はデジタル映像で、しかもよく見ると上海の徐家匯の街並。山は全部ビルや電線などの人工物なんです。
こちらは北京のアーティスト・趙半狄のプロジェクト。さきほどご紹介したギャラリー・香格納画廊に所属するアーティストで、パンダのぬいぐるみをモチーフにしたユニークな写真作品は世界中で知られる存在です。今回展示されたのは、なんと10000人もの中国の子どもにパンダをテーマにした作品やパフォーマンスを創作してもらい、その収入で身寄りのないお年寄りのための家を作るという企画。中国の社会問題をバシバシ表面化させ、なおかつとってもかわいくて斬新でユニーク。こんな中国の現代アートが今、世界で注目されています。
話題作のブースにはメディアが集結します。 話題作のブースにはメディアが集結します。

話題作のブースにはメディアが集結します。

いかがでしたか? じわじわと上海アートに興味が湧いてきたのではないでしょうか。上海の美術館では、日本の有名美術館のように「教科書に載っている絵」や「世界的な名画」が見られるわけではありません。でもその分、先入観のない状態で斬新な作品に出会える楽しみがあります。日本にも横浜美術館や六本木ヒルズの森美術館など、ときどき上海アートを取り上げている美術館がありますよね。機会があれば、ぜひ見に行ってみて下さい。アートを知れば、上海という街の印象がさらに変わってくるはずです。
以上、上海ナビがお伝えしました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2010-09-30

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